マイホームを建てる際に見逃せないのが住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)です。2025年には制度の一部が改正され、要件に変更がありました。「家を建てたいけれど、自分は控除を受けられるのか」「自分はいくら得できるのか」シミュレーション事例付きで紹介します。
住宅ローン減税とは?制度の基本を整理
所得税・住民税からの控除の仕組み
住宅ローン減税とは、住宅ローンの年末残高に応じて所得税から控除が受けられる制度です。所得税で控除しきれない場合は翌年度分の住民税において、控除しきれなかった分をその年分の所得税の課税総所得金額等の額の5%(最高9.75万円)の控除限度額の範囲内で差し引かれるため、ローン返済中の家計負担を大幅に軽減できます。たとえば、年末残高に基づく控除額が25万円でも、所得税が20万円しかない場合、残りの5万円は翌年度分の住民税から控除されます。家を購入する場合、高額ローンになるため、この制度をうまく活用することで大きな節税効果が期待できます。
控除期間と控除率の違い
住宅ローン減税の控除期間は、住宅の種類や入居時期によって異なります。
- 新築住宅や買取再販住宅のうち、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 といった認定住宅は→13年間
- 一般住宅(2024年以降に入居)や中古住宅、増改築などの場合は→10年間
控除率はどの住宅でも共通して「年末ローン残高の0.7%」ですが、控除額の上限は住宅の種類や入居時期によって変わってきますので、自分の住宅がどの区分に当てはまるのかを事前に確認しておくことが重要です。
2025年版で変わる住宅ローン減税のポイント
2024年以前からの主な変更点
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅といった高性能住宅については、借入限度額の優遇措置が継続されます。加えて、子育て世帯や若者夫婦世帯の住宅取得を支援するため、借入限度額の上乗せや床面積要件の緩和措置も2025年まで継続されることになりました。なお、新築住宅では合計所得金額2,000万円以下であることが新たに条件として加わりました。
※子育て世帯等
- 子育て世帯:19歳未満の扶養親族を有する者
- 若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが40歳未満の者
住宅ローン減税を受けられる人と住宅の条件
借入金額・返済期間に関する条件
住宅ローン減税を受けるには、返済期間が10年以上であることが必須条件です。短期返済では対象外となるため注意が必要です。マイホームを計画する際には、ローンの組み方で控除額が大きく変わるため、金融機関とのシミュレーションが欠かせません。
住宅の床面積・築年数の要件
住宅の床面積については、面積が50㎡以上であることが原則条件となっています。ただし、新築住宅の場合、合計所得金額が1,000万円以下の方については40㎡以上50㎡未満でも対象となります。中古住宅の場合は築年数にも条件があり、築年数や耐震性能(新耐震基準に適合することの証明)または、既存住宅売買瑕疵担保責任保険の加入が条件となり、適用対象が限定されます。
入居期限や申請期限のチェックポイント
住宅ローン減税は「いつ入居したか」が非常に重要です。2025年の制度では、2025年12月31日までに入居していることが要件となります。また、申請も期限内に行わなければならず、初年度は確定申告の時期を逃すと控除が受けられないリスクがあります。特に注文住宅は建築スケジュールが天候や工事状況でずれ込むこともあるため、余裕をもった計画で進めていきましょう。
夫婦・共働き・単身での控除の違い
夫婦でペアローンを組む場合や連帯債務を利用する場合は、それぞれの借入残高に応じて住宅ローン減税を受けることができます。たとえば夫婦で均等に借り入れた場合、各自が控除を受けられるため、合計で控除額が増えるケースもあります。ただし、借入金額や年収のバランスによっては、控除しきれずに思ったほどのメリットが得られない場合もあります。特に単身者や扶養家族が多い世帯では所得税額が少なく、控除額をすべて使いきれないこともあるため、住民税からの控除を含めてシミュレーションしておくことが大切です。
控除額の計算方法とシミュレーション
住宅ローン減税は、年末のローン残高に控除率0.7%を掛けて算出されます。ただし、実際に受けられる控除額は「その年に支払う所得税+翌年の住民税」の範囲までです。したがって、年収や家族構成によって減税効果は大きく変わります。また、この控除は毎年ローン残高に応じて計算されるため、繰り上げ返済を行うと控除額も変わる点に注意が必要です。ここでは、年収別に控除額のシミュレーションを見てみましょう。
年末年収別シミュレーション(ローン残高3,000万円、控除率0.7% → 控除計算上は21万円)
・年収300万円(夫婦+子ども1人)
所得税は約1.8万円しかないため、ほとんどを住民税から控除する形になります。結果として控除をフルに活かすことは難しいケースです。
・年収500万円(夫婦+子ども1人)
所得税は約8万円なので、残りは住民税から差し引かれます。所得税・住民税を合わせれば控除枠をある程度活用できますが、全額控除しきれないこともあります。
・年収700万円(夫婦+子ども1人)
所得税は約20万円。住民税からの控除を少し使う程度で、ほぼ控除を使い切れる水準です。
・年収800万円(夫婦+子ども1人)
所得税は約31.7万円あるため、21万円の控除枠を余すことなく使えます。
住宅ローン減税の申請方法と必要書類
住宅ローン減税を受けるには、控除額を計算するだけでなく、正しい手続きを行うことが不可欠です。初年度と2年目以降で手続きの方法が異なるほか、必要書類も揃えておく必要があります。ここでは、注文住宅を建てる際に注意すべき申請の流れと必要書類を詳しく解説します。
初年度は確定申告が必須
住宅ローン減税を受ける初年度は、必ず確定申告を行う必要があります。給与所得者であっても、金融機関からの借入金残高証明書や登記事項証明書などの書類を添付して申告します。初年度に申告を行わないと、以降の年も控除を受けることができないため、期限内(入居した年の翌年2月16日~3月15日)に申請することが重要です。
必要な書類一覧
- 住宅ローン控除用の確定申告書類(初年度のみ)
- 金融機関等から交付された『住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書』の原本
- 住宅の工事請負契約書又は売買契約書の写し
- 住宅の登記事項証明書の原本
- 土地の登記事項証明書の原本(土地の購入に係る住宅ローンについて控除を受ける場合)
- 土地の売買契約書の写し(土地の購入に係る住宅ローンについて控除を受ける場合)
- 国や市区町村等からの補助金決定通知書など補助金等の額を証する書類(補助金等の交付を受けた方)
- 贈与税の申告書など住宅取得等資金の額を証する書類の写し(住宅取得等資金の贈与の特例を受けた方)
- マイナンバーカード(個人番号カード)の写しなど
初年度に確定申告を済ませた後は、2年目以降は勤務先での年末調整で住宅ローン減税を受けることができます。給与所得者の場合、毎年の年末調整書類にローン残高証明書を添付することで控除が適用されます。ただし、引っ越しや転職などで勤務先が変わった場合は、再度確定申告が必要となる場合があります。
住宅ローン減税で注意すべき落とし穴
住宅ローン減税は非常に魅力的な制度ですが、条件や手続きを誤ると控除を受けられないケースもあります。特に注文住宅の場合、建築スケジュールや住宅性能の条件など、事前に確認すべきポイントが多くあります。ここでは、よくある注意点を具体例とともに解説します。
所得税が少なく控除を受けきれないケース
年収や所得税額が少ない場合、計算上の控除額を全額受けきれないことがあります。例えば年末ローン残高に基づく控除額が30万円でも、所得税額が20万円しかない場合、残りの10万円は住民税から控除されます。所得税自体が少ない世帯では、控除の恩恵が限定的になるため、住宅購入前にシミュレーションを行うことが重要です。
入居時期や申請漏れによる対象外リスク
住宅ローン減税は「入居日」が制度適用の要件となります。建築スケジュールが遅れ、入居が予定より後になると、控除期間の開始が遅れるか、場合によっては対象外となることがあります。また、初年度の確定申告を忘れると、その後の年も控除が受けられなくなるため、申請期限は厳守しましょう。
中古住宅で注意すべき築年数の制限
中古住宅の場合、築年数によって控除の対象外となるケースがあります。昭和57年1月1日以後に建築されたものが基本条件です。ただし取得後に耐震改修工事を行い、耐震基準に適合することが証明されたときは、築年数が古くても控除対象になる場合があります。中古住宅を検討している方は、事前に確認しておきましょう。
よくある質問
住宅ローン減税は制度が複雑で、疑問や不安を持つ方も少なくありません。ここでは、住宅を建てる方が特に気になる質問をまとめ、わかりやすく回答します。
住宅ローン減税の2025年の条件は?
2025年の住宅ローン減税は、返済期間が10年以上であること。工事完了の日または取得の日から6ヵ月以内に、自己の居住の用に供すること。床面積が50㎡以上かつ合計所得金額が、2,000万円以下であること。新築住宅の場合、合計所得1,000万円以下の者(各年ごとに判定)に限り、「40㎡以上50㎡未満でもOK」です。
新築住宅の住宅ローン控除の最大限度額はいくらですか?
控除上限額は住宅の種類によって異なります。一般的な新築住宅であれば0万円、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は最大31.5万円(最大35万円)。ZEH水準省エネ住宅は最大24.5万円(最大31.5万円)。省エネ基準適合住宅は最大21万円(最大28万円)まで控除が可能です。
※カッコ内の金額は、子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額です。
住宅ローン減税額はどうやって計算するんですか?
基本的には「年末の住宅ローン残高 × 控除率(0.7%)」で計算されます。控除は所得税から差し引かれ、所得税で控除しきれない場合は翌年度分の住民税からも控除されます。繰り上げ返済を行った場合は残高が減少するため、控除額も変動します。
住宅ローン減税を受けられる条件は?
返済期間10年以上のローンを利用していること、住宅の床面積や築年数が条件を満たすこと、入居日が制度適用期間内であることが主な条件です。また、所得制限(2,000万円以下)により高所得者は控除対象外となる場合があります。
他の補助金や支援制度と併用はできますか?
原則として住宅ローン減税は他の補助金と併用可能です。例えば「子育てグリーン住宅支援事業」などと組み合わせることで、建築費や設備費の負担をさらに軽減できます。ただし、対象となる条件が異なるため、事前に確認が必要です。
繰り上げ返済をした場合の控除はどうなりますか?
繰り上げ返済を行うと年末ローン残高が減少するため、翌年以降の控除額は減少します。控除額を最大化したい場合は、繰り上げ返済のタイミングを計画的に検討することが重要です。
まとめ
住宅ローン減税は、住宅を建てたり、購入する方にとって大きな節税メリットがあります。控除額や条件を理解し、シミュレーションで自分のケースを確認することが重要です。高性能住宅や認定住宅を選ぶと控除額が増え、長期的な家計負担も軽減できます。申請手続きや必要書類を正確に揃え、入居スケジュールを計画的に進めることで、住宅ローン減税を最大限活用しましょう。