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住宅の気密性能の重要性とは?|快適で省エネな住まいに欠かせない理由を解説

2025.06.02

担当:高橋 (盛岡営業所)

気密性能とは?その基本と役割

高性能住宅を建てるうえで欠かせないのが「気密性能」です。気密とは、建物にどれだけ隙間がないかを示す性能であり、目に見えない住宅の“質”を左右する重要な要素です。このセクションでは、気密性能の基本的な意味と、住宅の中でどのような役割を果たすのかを解説します。

気密性能とは「隙間の少なさ」を示す指標

気密性能とは、簡単に言えば「住宅の隙間の少なさ」を数値化したものです。外壁や窓、天井や床など、住宅にはさまざまな接合部分が存在しますが、その施工精度によって、空気が出入りする“隙間”が生じます。この隙間が大きいと、外気が侵入したり、室内の空気が逃げたりするため、冷暖房効率が落ち、快適性やエネルギー効率が著しく低下してしまいます。

高気密住宅では、これらの隙間を極限まで減らすことで、外気の影響を受けにくい空間をつくり出します。つまり、気密性能は「室内の環境をいかにコントロールしやすくするか」を決定づける、住宅の基本性能なのです。

住宅におけるC値とは?その意味と測定方法

気密性能を数値として表す際に使われるのが「C値(シーチ)」です。C値とは「相当隙間面積」のことで、建物全体にどれだけの隙間があるかを、床面積1㎡あたりの面積(cm²/㎡)で表したものです。たとえばC値=1.0という場合、床面積1㎡あたりに1cm²の隙間があることを意味します。

一般的に、C値が小さいほど気密性能が高い住宅とされます。高気密住宅の目安としては、C値=0.5以下が望ましいとされており、優れた施工を行う工務店では0.3以下を実現している例もあります。

測定は「気密測定機(ブロワードアテスト)」を使い、実際に家を陰圧状態にしてどれだけ空気が漏れるかを計測します。この数値は、設計段階ではなく、実際に建物が完成したタイミングで行うのが一般的です。

断熱性能との違いと関係性

気密性能と混同されやすいのが「断熱性能」です。断熱は、熱の移動を抑える性能であり、壁や屋根に断熱材を施工することで夏の暑さ・冬の寒さを室内に伝えにくくします。

一方で気密は、空気の流れそのものを制御する性能です。いくら高性能な断熱材を使っても、隙間だらけの家ではそこから空気が出入りし、断熱材の効果も半減してしまいます。つまり、断熱と気密はセットで初めて効果を発揮するものであり、どちらが欠けても快適性・省エネ性の高い住宅は実現しません。

特に寒冷地では、気密が甘いと室内の水蒸気が壁内に入り込み、結露やカビ、さらには構造材の腐食といった問題を引き起こす可能性があります。だからこそ、気密性能は「住宅の基本性能」として、断熱と同等に重視されるべき項目なのです。

 気密性が重要な理由4選

気密性能が高い住宅は、単に「隙間が少ない」だけではありません。その効果は、住まいの快適性・経済性・耐久性・健康面にまで及びます。このセクションでは、なぜ気密性が重要なのかを、4つの具体的な理由から解説します。

① 冷暖房効率の向上で光熱費を節約

気密性の高い住宅では、外気の侵入や室内の空気の漏れが抑えられるため、冷暖房によって整えた空気が外に逃げにくくなります。その結果、エアコンや暖房機器の効率が高まり、少ないエネルギーで室温を快適に保てるようになります。

たとえば、C値が1.0の家と0.3の家を比較すると、空気の出入りする隙間の面積は3倍以上違います。その分、0.3の住宅では冷暖房効率が高く、年間の光熱費も大幅に削減される傾向があります。光熱費の高騰が続く今、気密性を高めることは経済的にも大きなメリットとなるのです。

② 室内の温度ムラが減り、1年中快適に

気密性が低い住宅では、部屋ごとに温度差が生じやすく、冬は廊下が寒い・夏は2階が蒸し暑いといった不快感が生まれます。これは隙間から冷気や熱気が入り込み、空調の効果が十分に行き渡らないことが原因です。

一方、高気密住宅では室内の空気が均一に保たれやすく、家全体が快適な温度に保たれます。廊下や脱衣所でもヒヤッとしない、家全体が「温度のバリアフリー」になるという点も、高気密住宅ならではの大きな魅力です。

③ 結露・カビの発生を防ぎ、健康にも効果

気密性が低い家では、外気との温度差により窓や壁内部で結露が発生しやすくなります。特に冬場は暖かい室内の水蒸気が壁の中に侵入し、断熱材の内部で結露する「内部結露」が問題となります。

このような状態が続くと、カビやダニが発生しやすくなり、アレルギーや喘息などの健康被害を引き起こすリスクも高まります。一方で、気密性が高ければ湿気の移動も制御でき、結露のリスクを大幅に軽減できます。

また、高気密住宅では計画的な換気も効果的に働くため、室内の空気がきれいに保たれ、家族の健康維持にもつながります。

④ 建物の劣化を防ぎ、住宅の寿命が延びる

隙間から侵入する湿気や空気は、目には見えなくても住宅の構造を徐々に傷めていきます。たとえば、壁内で結露が繰り返されると、断熱材が劣化したり、柱や梁などの構造材が腐ったりする原因になります。

気密性能が高ければ、こうした湿気の侵入を最小限に抑えられるため、建物の劣化を防ぎやすくなります。結果として、住宅の耐久性や寿命が向上し、長期的に住み続けられる「資産価値の高い家」になるのです。

気密性能の基準と目安

気密性の重要性は理解できたけれど、「実際にどれくらいの気密性能があれば良いのか?」というのは多くの人が抱える疑問です。このセクションでは、気密性能を判断するための基準であるC値の目安や、各種認定制度との関係、そしてどんな住宅でも気密測定が可能なのかについて解説します。

C値の目安(良いC値・悪いC値)

気密性能の指標であるC値(相当隙間面積)は、数値が小さいほど優れているとされます。一般的な目安は以下のとおりです:

  • C値2.0以上:一般的な住宅。気密性は低め。
  • C値1.0前後:ある程度の気密性はあるが、まだ隙間が多い。
  • C値0.5以下:高気密住宅の基準。
  • C値0.3以下:優れた施工技術を持つ工務店・ビルダーの家。

かつては「次世代省エネ基準」でC値が定められていましたが、現在の省エネ基準では明確なC値の基準は設けられていません。それでも、性能重視の住宅では0.5以下、できれば0.3を切る数値を目指すのが理想とされています。

ZEHや長期優良住宅と気密基準の関係

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や長期優良住宅などの高性能住宅は、断熱性能や省エネ性能だけでなく、気密性も大きく影響します。

たとえば、ZEHでは外皮平均熱貫流率(UA値)の基準は明確にありますが、気密性(C値)は必須要件ではありません。しかし、いくら断熱性能を高めても、気密性が低いとエネルギーロスが大きくなり、ZEHの効果が発揮されにくくなるのです。

そのため、実際にZEHを達成している住宅会社の多くは、C値0.5以下を目標にしており、気密測定を積極的に実施しています。長期優良住宅においても、建物の劣化対策や省エネ性を維持する観点から、気密性は非常に重要な裏要素です。

どんな家でもC値は測定できるのか?

C値の測定には、気密測定装置(ブロワードア)を使い、建物を機械的に陰圧にして空気の漏れ量を測定します。これは、新築住宅であれば基本的にどんな構造でも測定が可能です。木造在来工法でも、2×4(ツーバイフォー)でも、測定に支障はありません。

ただし、測定のタイミングが重要です。完成後に壁や天井がすべて塞がれた状態だと、隠れた隙間を調整できません。そのため、一般的には断熱材や下地材が施工された「中間時(中間検査)」に測定を行うのが望ましいとされています。

また、気密測定は義務ではないため、対応していない住宅会社もあります。気密性にこだわりたい場合は、測定の実績や実施体制が整っているかを確認しておくことが重要です。

高気密住宅のメリットとデメリット

気密性能を高めることには多くの利点がありますが、一方で注意すべき点も存在します。このセクションでは、高気密住宅の代表的なメリット・デメリットを具体的に解説し、後悔しない家づくりのために知っておくべきポイントをお伝えします。

メリット:省エネ・静音・高耐久

高気密住宅には次のような大きなメリットがあります。

  • 省エネ性の向上:空気の出入りが少なく、冷暖房効率が高まるため、光熱費の削減に直結します。
  • 音の遮断性が高い:気密性が高いと隙間からの音漏れが少なくなり、外の騒音を遮断できるため、静かで落ち着いた住環境が実現します。
  • 建物の劣化を防ぐ:湿気やホコリが構造体に入り込まないため、結露や腐食を防ぎ、建物の耐久性が向上します。
  • 空気の質を管理しやすい:計画換気との相性がよく、常に清潔な空気環境を保ちやすくなります。

このように、高気密は住宅性能を総合的に底上げする要素といえます。

デメリット:換気への配慮が必要/施工の精度が問われる

一方で、気密性が高まることによる注意点もあります。

  • 自然換気が起きにくくなる:隙間が少ないため、計画的な換気システムがないと空気がこもりやすくなります。結果として、室内の湿気やCO₂濃度が上昇しやすくなるリスクがあります。
  • 施工のバラツキが性能に直結する:気密は「数値で測れる性能」であるがゆえに、施工者の腕によって大きく結果が変わる側面があります。小さなミスがC値の悪化やトラブルの原因になるため、経験豊富な職人や施工管理が重要になります。
  • コストアップの可能性:気密性の高い家を実現するには、施工手間や材料の精度が求められ、その分コストが上がることもあります。ただし、長期的に見れば光熱費の削減で元が取れるケースが多くなっています。

適切な換気システム(第1種換気など)の重要性

高気密住宅では、換気の設計と実装が非常に重要です。特におすすめされるのが「第1種換気(機械給気+機械排気)」の導入です。

第1種換気では、室内の空気の流れをコントロールできるため、必要な場所に新鮮な空気を供給し、汚れた空気を効率よく排出することが可能です。また、熱交換機能付き換気システムを選べば、室内の温熱環境を損なわずに換気ができ、冷暖房効率の低下も防げます。

気密性を高めるなら、換気計画は必須。高気密=息苦しいという誤解を防ぐためにも、性能に応じた換気設計を行うことが、健康で快適な暮らしには欠かせません。

気密性を高めるための対策と施工の注意点

気密性能は、住宅の設計段階から施工まで一貫して意識することで初めて高めることができます。このセクションでは、気密性を確保・向上させるための具体的な方法と、注意すべき施工上のポイントを詳しく解説します。

設計段階で意識すべきポイント

気密性を高めるためには、まず「隙間を作らない設計」が前提になります。

  • 構造の単純化:凹凸の多い複雑な間取りや屋根形状は、気密処理が難しくなるため、できるだけシンプルな構造にすることが基本です。
  • 開口部の配置と種類:窓やドアは気密性が低下しやすいポイントです。開口部の数を減らしたり、樹脂サッシ+Low-E複層ガラスなど高性能な断熱・気密窓を採用することで、全体の性能が大きく向上します。
  • 断熱・換気とのバランス:断熱性・換気計画とセットで設計しないと、せっかくの気密性が十分に活かされない場合があります。

つまり、気密性能は「どんな材料を使うか」だけでなく、「どう設計するか」が重要なスタート地点です。

気密施工のチェックポイントと職人の技術

気密性能は、現場での施工精度に大きく左右されます。以下は、施工時に特に注意したいポイントです。

  • 配管・配線の貫通部処理:壁や天井を貫通する電気配線・水道配管まわりは、非常に気密が確保しづらい部分です。専用の気密パッキンやテープで丁寧に処理することが求められます。
  • サッシまわりの気密処理:窓枠と壁の間にわずかな隙間があると、そこから大きく空気が漏れます。ウレタンなどでしっかりと目地を埋め、気密テープで密封することが基本です。
  • 気密シートの施工精度:天井や壁に貼る気密シートの継ぎ目処理や、釘穴の補修など、細かな作業の精度が性能に直結します。

高気密を実現するには、高い施工技術を持つ職人や、気密施工の経験が豊富な工務店を選ぶことが不可欠です。

気密測定(気密検査)はいつ・誰が行う?

気密性能を「見える化」する手段が、**気密測定(ブロワードアテスト)**です。これによりC値という具体的な数値で性能を確認できます。

  • タイミング:多くの場合、断熱材・気密シートの施工後、内装仕上げ前の「中間検査」のタイミングで測定を行います。この段階なら、万が一気密性が不十分だった場合にも、再施工による調整が可能です。
  • 誰が行う?:第三者機関、または社内で測定機器を保有する施工会社が実施します。高気密住宅を手がける会社であれば、自社で測定できる体制を整えているところが多いです。
  • 測定結果のフィードバック:信頼できる住宅会社は、C値の測定結果を報告書として提示し、施工内容の説明や再調整の対応をしてくれます。

住宅会社選びの際は、気密測定を行っているかどうかが、技術力と真摯な家づくり姿勢のバロメーターとも言えるでしょう。

すでに建っている家の気密性を確かめる方法

新築時に気密性能を確保することが理想ですが、すでに住んでいる住宅でも「うちは気密性が低いのでは?」と不安を感じる方は多いものです。このセクションでは、既存住宅の気密性を確認する方法や、改善の可能性について詳しく解説します。

気密性が低い家のサインとは?

以下のような症状がある場合、気密性が低い可能性があります。

  • 冬は寒くて夏は暑い:冷暖房が効きにくく、エアコンの設定温度にしても部屋がなかなか快適にならない。
  • 結露やカビが頻繁に発生する:外気が入り込みやすいことで室内の温度差が大きくなり、結露の原因になります。
  • 外の音がよく聞こえる:サッシまわりや壁に隙間があると、気密性が低くなると同時に、防音性も低下します。
  • ドアや窓を閉めても風が吹き込む:とくに古い木造住宅などでは、構造材の収縮などによって隙間が生じているケースもあります。

こうした「体感できる違和感」こそが、気密性低下のサインといえるでしょう。

リフォームで気密性を改善する方法はある?

既存住宅であっても、ある程度の気密性能改善は可能です。以下のような方法が考えられます。

  • サッシの交換または内窓の設置:最も効果的なのは、断熱・気密性能の高い樹脂サッシやLow-Eガラスへの交換です。費用を抑えたい場合は、既存の窓の内側に「内窓(二重窓)」を追加する方法もあります。
  • 断熱材と気密シートの再施工:リノベーションのタイミングで壁や天井を開ける場合、気密シートの施工と断熱材の入れ替えを行うことで、気密性を高めることができます。
  • 換気設備の見直し:気密性を改善した場合は、それに対応する換気システムの導入・調整も必要です。第3種換気から第1種換気への変更など、トータルでの性能バランスが重要です。
  • スキマ風対策:気密テープによる補修、玄関ドアのモヘアシール追加、配線・配管の貫通部の処理など、小規模でも効果のある改善策もあります。

ただし、既存住宅の気密改修は、建物の構造や状態によってできること・できないことが変わるため、信頼できるリフォーム会社や住宅診断士に相談し、事前に現状調査を行うことが大切です。

よくある質問(Q&A)

気密性能について調べている方からよく寄せられる疑問に、専門家の立場からわかりやすくお答えします。

住宅の気密性能とは何ですか?

気密性能とは、住宅の「隙間の少なさ」を示す性能です。外部と室内の空気がどれだけ遮断されているかを示し、気密性が高いほど冷暖房効率が良くなり、結露やカビ、外気の侵入を防ぎやすくなります。気密性能は「C値(相当隙間面積)」という指標で数値化されます。

なぜ気密性が高い方が良いのですか?

気密性が高いと、以下のような多くのメリットがあります。

  • エアコン効率が良くなり、光熱費を削減できる
  • 外気の影響を受けにくくなり、室内が一年中快適
  • 湿気の侵入が減ることで、結露やカビの発生を防止
  • 家の構造体へのダメージを防ぎ、住宅の長寿命化につながる

また、気密性の高い住宅は、換気計画を立てやすくなるため、計画換気の効果も最大化されます

気密性と断熱性、どちらが重要?

どちらも重要で、セットで考える必要があります。断熱性だけが高くても、気密性が低いとすき間から空気が漏れて断熱効果が損なわれます。逆に、気密性だけ高くても断熱が不十分だと、冬に冷気が伝わりやすくなります。したがって、両者はバランスよく計画し、**「高気密・高断熱住宅」**として設計・施工することが理想です。

高気密住宅にすると息苦しくなりませんか?

気密性を高めても、適切な換気システムを導入していれば息苦しくなることはありません。むしろ、計画的な換気が可能になるため、室内の空気が常にきれいに保たれます。気密性の低い住宅では、風任せの換気になってしまい、必要な空気の入れ替えができない場合もあります。

工務店選びで気密性能を重視すべき?

はい、とても重要です。気密性は施工品質に大きく左右されるため、設計力だけでなく、現場の施工技術や職人の丁寧さが問われます。C値測定を実施しているか、気密施工に関する知識や実績があるかを確認し、信頼できる工務店・ハウスメーカーを選ぶことが、高性能住宅づくりの第一歩です。

まとめ:快適な住まいの鍵は「気密・断熱・換気のバランス」

住宅の快適性、省エネ性能、健康への影響、そして長寿命化を実現するためには、「気密性能」は欠かせない要素です。

気密性が高まることで冷暖房の効率が良くなり、光熱費の節約や室内の温度ムラの解消につながります。さらに、結露やカビのリスクも軽減され、家族の健康にも良い影響を与えます。

ただし、気密性だけに注目するのではなく、断熱性能・換気性能とセットでバランスよく設計・施工することが、理想の住まいづくりには欠かせません。

これから家づくりを始める方は、工務店やハウスメーカー選びの際に「気密性能にどのように対応しているか?」を確認し、C値測定を行っているか、実績はあるか、施工精度は高いかなどを基準に判断することが重要です。

そして、すでに建っている住宅でも、サッシ交換やリフォームによって気密性を向上させることは可能です。快適で長く住める住まいを実現するために、「気密性能」への理解と意識を高めていきましょう。

この記事を書いた人

盛岡営業所
高橋 (盛岡営業所)

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